傾聴訓練が高校生のコミュニケーションスキル、孤独感、

ならびに学校生活満足度に及ぼす影響についての研究

対話法研究所 浅野良雄

あらまし

 対話法研究所の浅野は、〈対話法〉の効果を実証するために、高校生を対象として、「確認スキル」(確認型応答)を中心とした傾聴訓練が、生徒のコミュニケーションスキル、孤独感、学校生活満足度に与える影響を調べた。
 その結果、傾聴訓練が、「同輩とのコミュニケーションスキル」を向上させること、「孤独感」を低減させること、「学校生活満足度」を増大させることがわかった。なお、「確認スキル」の訓練効果は、言い換えれば〈対話法〉で提唱されている「確認型応答」の訓練効果に相当するため、この研究は〈対話法〉の効果を実証したことにほぼ等しいと言えよう。
 このように、「確認スキル」(確認型応答)のみをターゲットスキルとした傾聴訓練で一定の効果が示されたことは、〈対話法〉の普及活動を進めるうえで喜ばしいことである。今後、さらに小中学生や成人を対象とした同様の研究の実施が期待される。

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はじめに

 文部科学省の近年の調査によると、高校生の中退理由として「学校生活・学業不適応」が高い率を示しており、高校生活への適応に関する生徒への効果的な援助が課題になっている。そこで、その一助として、高校生に適した学級単位の集団SST(社会的スキル訓練)の実施が学校生活への満足度の増大につながるのではないかと考えた。とくに、コミュニケーションにおいて重要とされる「傾聴スキル」は、社会的スキルのなかでも重要な位置をしめているため、ここにポイントを絞った研究が重要であると考えた。さらに、本研究では、高校教育での「時間的制約」を考慮して、さまざまな社会的スキルの中から選んだ「傾聴スキル」の中の、いいかえ・要約・感情の反映・反射のみを「確認スキル」としてターゲットスキルに設定して訓練を実施することとした。

方法

 群馬県内のK私立高校の3年生431名(男子243名、女子188名)を対象に事前アンケート(同輩とのコミュニケーションスキル、孤独感、学校生活満足度)を実施して、その結果や男女比を考慮しながら、訓練群(3クラス:90名)と統制群(3クラス:82名)が等質になるよう群分けした。
 訓練群では、2006年10月下旬〜11月上旬、ホームルームと読書の時間(合わせて20分)を使って、4〜8回にわたり、クラス担任の指導により訓練が実施された。訓練は3人(発言者、確認者、観察者)1組で行われ、発言者が自分の言いたいことを話したあと、確認者が発言者の話の要点を言い返して確認する形で発言と確認を繰り返し、約3分後に発言者と確認者が役割を交替するという方法であった。なお、確認者の立場にいる間は、「同意」「否定」「評価」「批判」「意見」「なぜ?という質問」は言わないことをルールにした。一方、統制群では、その期間中、通常のホームルームと読書の時間を過ごした。
 傾聴訓練終了後と、その約1ヶ月後に、両群を対象としてアンケートを実施した。アンケートに用いた尺度は、「同輩とのコミュニケーションスキル尺度」(山口ら,2004)「改訂版UCLA孤独感尺度」(諸井,1991)「学校生活満足度尺度(高校生用)」(河村,1999)であった。

結果

 「同輩とのコミュニケーションスキル」においては、訓練群と統制群の双方とも、群全体としては、訓練前・訓練後・フォローアップ時における得点に有意な変化は見られなかった。しかし、訓練群の低得点群においては、訓練後に有意な得点の上昇が見られた(図1)。この結果から、傾聴訓練が、「同輩とのコミュニケーションスキル」の低い生徒に対してスキルを向上させる可能性のあることがわかった。
 

図1 同輩とのコミュニケーションスキル得点群別の平均値の変化

 

 「孤独感」においては、訓練群と統制群の双方とも、群全体としては、訓練前・訓練後・フォローアップ時における得点に有意な変化は見られなかった。しかし、訓練群のうち孤独感が高い群では、訓練後に孤独感の有意な低減が見られた(図2)。この結果から、もともと孤独感が高い生徒に限り、傾聴訓練により孤独感が低減する傾向にあることがわかった。
 

図2 孤独感の得点群別の比較

 

 「学校生活満足度」については、訓練群も統制群も、ともに群全体としては下位尺度である「承認得点」(生徒が自分の存在や行動を級友や教師から承認されているかどうかに関連する尺度)と「被侵害・不適応得点」(生徒の不適応感やいじめ・冷やかしの侵害の有無に関連のある尺度)において、訓練前・訓練後・フォローアップ時における得点に有意な変化は見られなかった。しかし、訓練群の「学校生活不満足群」(低承認得点、高被侵害・不適応得点)に限って分析すると、訓練後に「承認得点」の有意な増加が見られた(図3)。この結果から、学校生活不満足群においてのみ、傾聴訓練によって学校生活満足度の承認得点が増大する傾向にあることがわかった。

 

図3 学校生活不満足群の学校生活満足度の平均値の変化

 

おわりに

 限られた範囲内ではあるが、本研究により、簡略化された傾聴スキルである「確認スキル」(確認型応答)のみをターゲットスキルとした傾聴訓練に一定の効果があることがわかった。
 一般的に、コミュニケーションスキルが不足している、孤独感が高い、学校生活満足度が低い生徒は、さまざまな問題行動を起こしやすいと言われているが、このような生徒への予防的な教育活動の一環として、「確認スキル」(確認型応答)のみをターゲットスキルとした傾聴訓練を用いることが期待される。また、学校における「いじめ」問題の対策の一つとしても効果を発揮するものと思われる。


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